不便を再考する2

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不便を再考する1の続きです。

川上先生とご一緒に不便益を研究されている平岡先生によると,不便と便利,益と害という2軸をつくり,象限分けをしてその説明がなされています。


平岡先生のサイトより

この象限分けについて研究者の間では基本原則のように多用されます。明快で解りやすさはあるのですが,H.E.S.O.思考的には対立軸的な考え方では必ず「あいだ」という悩ましい問題を内包してしまいますので,私としては基本的にその姿勢を採りません。
実際,勉強会に何度か参加させて頂いた際にも,何度もその「あいだ」をどうとらえるかの議論が起こっていたのを覚えています。

私の考案したへそ思考では,「あいだ」は共通項で結ばれる思考形態を採ります。
何故かというと,差異では差異同士の「あいだ」が曖昧だからです。そこには「あいだのあいだ」という無限に続く問いが発生する可能性があるのです。

例えば60点が合格ラインで59点は落第だとします。この「あいだ」には明確な違いがきちんと立証できるかと言われると,これは非常に難しくなります。
何故ならそれはその結論を導いた者の解釈に依るところが大きいからです。一定の水準を保つために「便宜上ボーダーを引いた」以上の根拠はなかなか出てきません。

こうやって考えていると,ふと,別の視点が見えてきました。
新たにへそ思考で【より深く】見つめる点が3つ見つかりました。

それは「差異・共通項・度合い」という3要素です。
そしてこの3要素が今後のH.E.S.O.思考における応用展開に,とても重要な役割を果たすように感じています。
例えばコンピュータによる知能を構成するためのAIです。

私は工学的な知識は素人ですが,へそ思考の3領域にこの3要素を組み合わせることで,より人間に近い知能を人工的につくりだすことが可能ではないかと考えています。

その話はいずれまた。

さて,不便益をもう少しじっくりとへそ思考で見つめてみたいと思い,2週間ほどかけてへそ思考の図に「便利」と「不便」,「益」と「害」の4つの本質(意味や価値など)を辞書を片手に探ってみたのが下の図です。

最初は不便の本質とはなにか,について。
それを「こころ・出来事・仕組み」の3領域と,交差して生まれる共通項である「空想・理念・機能」の3領域について見つめてみました。

心情では「面倒くせぇ」という煩わしさがあり,出来事では「何が起こるか解らん」という偶発的要素を内包し,仕組みでは「は?訳分からん」という理解しにくさがあるのではないかとの一定の結論に達しました。便利でも同様に考えてみると,相対的な構図になっていることが解りました。

ところが,益と害については,相対的な構図になっていないことが明らかになりました。改めて考えてみれば,確かに益の対義語は不利益ですし,害の対義語は無害ですね。
へそ思考で見つめると,出来事のみ対義語として一致しましたが,こころと仕組みについては一致しないという結論に達しました。

不便の本質に向かう事態

便利の本質に向かう事態

益の本質に向かう事態

害の本質に向かう事態

この図をつくったことで,不便と益の関連がより明確になった気がしています。

ちょっと整理してみましょう。
象限分けされていた分類に則って表現してみると以下のようになりそうです。

便利益「造作もないし潤いもある」
便利害「造作はないけど為にならない」
不便益「容易さがないけど潤いがある」
不便害「容易さがない上に為にならない」

上記それぞれに6×6通りの組み合わせがありますので,不便益については36通りの状態が想定されそうですね。

例えば,
厄介〜期待「煩わしさがあるけど夢が広がる」
乱雑〜志向「ごちゃごちゃしてるけど未来を思い描ける」
曖昧〜重宝「はっきりしていないけど役には立つ」
こういった組み合わせが36通りあるのです。

このように,H.E.S.O. Thinking(へそ思考)は,さまざまな対象の意味や価値を探り,その本質に迫る思考の原理として活用することが可能です。

次回はその図を元に「へそ思考の概要と利用」で,考え方の基本を説明しましょう。

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