モノ思考からの続きです。
誤解があるといけませんが、どちらが良くてどちらが良くない、ということではありません。
また,これは「思考」ですから、認知か非認知かと言うなら、認知領域とお考えください。
そして両方を行き来する関わり方を楽しむ姿勢を大切にして欲しいと考えています。
◯コト思考
具体的な「こと」を考えたり実行したりするのは「出来事」に対して主体的な想いを抱いて「何か」に関わることです。
出来事だけに着目するのはモノ思考の領域ですが、コト思考では更にその周辺の関係性を見つめます。
さて、一定のルールに基づいて計画し、進めるためには欠かせない「仕組み」もあります。
そこには、出来事を起こすための根拠や解釈が必須です。
それらから考えるための気づきやきっかけを得たり、基本や前提にしたり、関係性を見つめて念入りに調整したりします。
ところが、ひとたびそのプラン実行が始まると、それはただひたすら目的に向かうといった「対象化された状態」となりますから「◯◯をする」こと自体が目的化・固定化してしまいます。
ことづくりでは、技術者がプログラミングを終えて、パソコンが組み立てられた手順を実行している状態などはコト思考と呼べないと考えています。
そのプロセス上において「作用」を見つめる態度があれば、そこに「コト思考」が生まれます。
コト思考は、主体的(自身の意思表示)・能動的(周囲への働きかけ)な想いを見つめ続ける状態の中で起こります。
自身や周囲に対して、自覚的にモノやコトの変容を呼び込む姿勢を維持し続ける態度とも言えそうです。
また、没頭すると言った無心になってのめり込む状態はコトのひとつですが、コト思考と呼ぶには足りない部分があります。
純粋意識とも呼ばれる無意識状態での行為行動は、意識という蚊帳の外でひたすらに作用を起こし続けるコトにあるからです。
これはその行為中に解釈や根拠などが必要な行動ではありません。
このような、非認知に関わることはまたの機会に触れますね。
動的な、不確定な、ゆらぎの要素があって、コト思考になります。
少々面倒臭い態度に感じられますが、それでもつかもうとする態度から何かしらの変化を生むか、次のきっかけにつなげるか、関わり方を見つめるか、同時進行する何かがあるのかなどの周囲の関係性とその先(これからの過程など)を考える必要があるのです。
つまり現状から未来志向につなげる方向を見つめることが、より深く自分と周囲のモノやコトなどを見つめている「コト思考」だと考えるのです。
もうひとつ例示してみましょう。
暑い時に扇風機をつけること。
これは行為としての「コト」ですが、これだけを取り上げてもコト思考をしているとは言えません。
行動をへそ思考で分析すれば、そこには少なくとも暑さの解消のための一つの「仕組み」として「出来事」を創出したいという「想い」があります。
一般的な観点で言えば、いわゆる目的ではなく、涼しくなるための手段です。
そしてその先につながる、暑さを解消する必要や、解消することによって得られる心地よさや、活力の持続なども含めた関係性の中で、様々なベクトルが未来志向でつながり広がっていくこと。
これが、ことづくり生活における「コト思考」です。
それは、例示の扇風機をつけることでどんな作用が起こるかまでを考えているからこそ浮かぶことです。へそ思考での3領域の方向に発想を広げる関係性を見つめることが大切になってきます。
手段がトリガー(きっかけ)となり、どんな役割を果たすかなどの多岐にわたる分析的な見つめ方があって、はじめてことづくり的な「作用」に触れることができます。
知識として記憶し、それを確認しているだけでは足りないのです。
ことづくり的には、「事実に寄り添った根拠や解釈を見つめる態度」をコト思考と呼びたいと考えています。
次回は作用と対象についてのお話です。