33thまなびあい勉強会レポート

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先日,無事に勉強会を終えました。ご参加くださった皆様,ありがとうございます。
また,勉強会の協力員として金銭や運営面でのサポートくださっているみなさまにもお礼申し上げます。

さて,勉強会のレポートがスタッフより上がってきましたので紹介します。
ご参加になれなかった皆様にも,どんな勉強会だったかの雰囲気を少しでも感じ取って頂ければ幸いです。

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第33回まなびあい勉強会 (2018年8月26日)
講師 : 桜美林大学    石川 輝吉 先生
人それぞれが豊かさを享受できる世界との向き合いかた

今回の勉強会は哲学領域から、「カント 信じるための哲学」、「ニーチェはこう考えた」の著書をお持ちの石川先生にお越しいただきました。十川事業所(ともにスタイル館)の窓から見える畑や里山の風景をきっかけに、石川先生の出身地や青少年期のお話などを思い出しながら語ってくださるほっこりした場面や、いろいろな哲学者の生き方や考え方を、まるで石川先生のご友人であるかのように、親しみを込めて話してくださる様子が印象に残っています。

哲学といえば愛とか正義とか、よくわからない概念的なものを難しく考えて、難しい言葉で説明する難解な学問というイメージがありますが、そうではなく、哲学は世界についての共通の説明をしようと試みたことから始まったのだそうです。紀元前7世紀、小アジアのミレトス(現トルコ)は交易の交差する都市で、人々は交流の中で世界の捉え方がそれぞれの地方によって違っており、自分たちの世界像だけでは通用しないことが分かりました。そこから、なるべく多くの人が納得できるような世界についての説明をたてよう、みんながつながり会える共通の説明はできないか、と考えるようになったとのことです。
絶対的な真理を探すのではなく、なるべく多くの人が納得できるような、土台となるような普遍性をもつ言葉を探す姿勢、もっといい言葉はないか探し続ける営みが哲学であるとの説明は、哲学を身近に感じられ、もっと学んでみたいと刺激を受けました。

人は自分の経験や立場から物事を考えて発言しており、いくら自分の正しさを主張してもそれは絶対に正しい答えとは限りません。お互いに言葉を交わせば、自分固有の感覚と、人と共通の感覚があることが分かります。人それぞれだから何でもありだとか、自分は自分、人のことは知らないというのではなく、自分と人は違うという前提に立ち、人との違いを認め、その中から共通の部分を探していこうとする哲学の姿勢は、大事にしたいと思いました。自分の中から、人と共通の部分を見つけたくなるというのは、実生活を振り返っても、「これ美味しいから食べてみて」とか「あの音楽素敵だから聞いてみて」など思い当たる節が多々あります。ソクラテスの時代から真・善・美は人に伝えたくなるという話
や、伝えたいのは人間には孤独を解きたい、つながりを求める本性があるという話は面白かったです。

また、勉強会の後半では、参加者からテーマを募り「本質観取」を2つ行いました。
ひとつめのテーマは「豊かさ」。それぞれが豊かさと聞いてイメージすること(余裕がある、心配事がない)や、豊かさを言い表す状態(○○以上、心が安定している)などを挙げ、それらに共通する部分を探しました。そして「豊かさとは、心や物質的ゆとり。与えられるゆとり(土壌、親の金など)と自分で自由にできるゆとり(時間、選択肢など)がある。」と導き出しました。

ふたつめのテーマは「美とアートの違い」。みんなで話し合う中で、美とアートは対極にあること(自然と人工、無意識に感じるものと考えさせられるもの)や、アートは美の一部であり、必ずしも美しくある必要はないことなどが、共通の認識であることが分かりました。何もかもをアートとして語られがちで、美との違いは特に意識していませんでしたが、いったい何がアートなのかが分かっていなかった私にとって、有意義な話し合いで、楽しい発見がたくさんありました。

本質観取をする中で、みんながある言葉をイメージして発言した内容は様々で、経験や考え方は「人それぞれ」、でもその内容の中には「共通の部分を見つけることができる」ということが実体験として分かりました。これこそ哲学の営みそのものであり、まなびあい勉強会という場で、参加者それぞれが意見を出し合うことで、人それぞれの中から自分と人との違いを認め合うよいきっかけになりました。実生活でも活かしていきたいと思います。

 

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