29thまなびあいレポート

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先日の勉強会の概要と感想をスタッフがまとめてくれましたので紹介します。参加できなかった方の参考になれば幸いです。

 

第29回まなびあい勉強会(2017年11月18日)
講師:熊本大学教育学部 准教授 苫野一徳

あなたらしさのかたちづくりに活かす「はじめての哲学的思考」

 

哲学といえば、最近はニーチェやアドラーなど、本やインターネットで目にすることも増えてきましたが、生死・愛・自分など、答えの見えにくい概念をとことん考え尽くす難解な学問といったイメージがありました。しかし苫野先生のお話をお聞きして、哲学とは「本質を洞察する」考え方そのものだと分かりました。本質とは、物事の根本的な性質のことで、世の中のさまざまな問題に対し、とことん考え抜き、できるだけ多くの人が納得できる答えを見出すための考え方のコツを提示する学問が哲学だそうです。

 

私たちは、物事を考えているときや自分の意見を述べるとき、「○○は絶対だ」とか「一般的に○○と言われている」、「客観的に考えて○○だろう」などと言いがちです。過去の経験からつくられた自分の信念を「絶対」とし、テレビやインターネットでよく目にするから、周りの皆が言っていたから、或いは自分の意見とするのに自信がないから、「一般的」や「客観的」という言葉を使ってしまうことが多いのではないのでしょうか。

しかし、苫野先生によると、絶対・一般的・客観的といった概念は、確かめようがないそうです。私たちの前にある物や事実は、それが絶対的な真実なのか、自分の目に映る風景と他の人に見えている風景が全く同じ色や形をしているのか、正確には分かりません。それらは疑おうと思えば帰謬法(矛盾を突いたり反論したりすること)を使って全てを疑うことが可能なのです。しかし帰謬法を用いてもただ1つ疑えないもの、確かなものは、自分の感覚として、見えている、感じているという確信や信憑だということでした。

 

また、「正しいのはAかBか」、「この問題は、あなたの意見と私の意見、どちらが妥当か」といった二項対立の問いは、まるでどちらかが正しいかのように思考を誤った方向へ狭めてしまいがちです。

どちらかが正しいという絶対的な答えなどないという前提に立ち、「あちらか、こちらか」ではなく「あちらも、こちらも」、どちらもできるだけ納得できる第三のアイデアを考え合う姿勢が大切だとお話してくださいました。お互いの主張をその元となる「欲望」の観点まで深く遡り、お互いに言葉にして伝え合い、すり合わせ、この部分は納得できるという共通した部分を探し出す姿勢が大切で、それによって信念対立は克服できる可能性があるそうです。

 

今の私を振り返ってみると、相手の意見や考え方を自分の物差しだけで判断し、一方的な決めつけをしてしまうことが多く、「相手との共通了解を探る」という視点に深く共感しました。

哲学的思考で大事なポイントは「ともに、前向きに、みんなが納得できる共通了解を探り合う姿勢」であると私は思います。思いやりや心遣いといった、日常生活で大事にしたい思いと、根底では共通しているのでないかと気づき、より一層心がけようと思いました。

勉強会の後半には、参加者みんなで哲学的思考の奥義「本質観取」を行いました。テーマは当財団が大切にしている「自分らしさ」。その本質は「他者関係との中で反復的に形成された、自己欲望との内的調和」となりました。

今回の勉強会で学んだ「本質を探る姿勢」、「みんなで共通了解を探り合う姿勢」を大切にして、自分らしいかたちづくりとして、私には何が出来るのか、じっくり考えていきたいです。

(STAFF 佐々木)

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