みる、という行為

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7月10日、京都造形芸術大学のオープンキャンバスに合わせて行われた講演に参加させて頂きました。

「見るということの諸相」というタイトルで、大阪大学教授の佐藤宏道先生が脳科学の話とアンドリューワイエスの作品を使って、大学一年生にわかりやすい講話と実習を行いました。

お話を伺っていて、印象に残った点を紹介します。

「人は概念で理解して見ようとする」そうです。
ということは、概念で(経験上)理解できない物体は、自分の概念でとらえられた形として見える、ということでしょう。
これは素早い判断につながる反面、誤解を生むこともあるでしょう。
自分が「こうだ」と思った見え方が、決してその本質をとらえているわけではないとの示唆を含んでいるのだと感じました。

「人間の視覚はりんかくに敏感である」というお話も大変興味深いものがあります。
輪郭とは、明るさの違いがある境界のことです。
ご存知の通り、輪郭は世の中に存在しませんが、輪郭線で描かれる漫画には輪郭が必要です。この、境目を見つけることに敏感である、という言葉だけを取り上げてみれば、実は人と人とのコミュニケーションにもつながってきます。
密接なつながりの中では境界は目立ちませんが、対立すると目立つということでしょう。

この講演を企画された福先生のお話でも「佐藤先生の講演は、「見る」にとどまらない」とおっしゃっておりました。つまり、美術作品を見るときにも同様のことが言えるということです。

疑問をもち、違いに気づき、様々な価値に心を閉ざすことなく自分を再構築する…
絵を鑑賞する中にも、こういった育ちが期待できるということです。

人は経験的に手に入れ、理解した気になっている知識も多いのですが、こうやって系統立てて整理される研究者がいるからこそ、新たな気づきにも出会えます。
ありがたいことです。

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