2014年2月15日(土)、13:40〜
第13回まなびあい勉強会を無事開催することが出来ました。
今回は寒い時期もあって参加者の増減が最後まであり、結局5名でしたが、「隠れ家」での広さ的にはゆったりしていて、とても濃厚な勉強会となりました。
今回の講師は、国立近代美術館工芸館学芸員の齊藤佳代先生。
前日は雪で交通網がほぼダウンした状態でしたが、一昨日より来県されていたこともあって、事なきを得ました。
今回は工芸品を用いた対話による鑑賞と言うことで、どんな風に作品と出会わせるか、どんな風に問いかけるかなど、非常に興味をそそる内容でした。
これまでまなびあいでは、福のり子先生のACOP、上野行一先生の対話による意味生成的な鑑賞と、対話による鑑賞の2大著名人にご講演頂きましたが、工芸品での対話はやったことがありませんでした。
まずは「みる」とはなにか、という問いから始まりました。
普段何気なく使っている言葉には、多義性を含む言葉が数多くあります。発音は同じでも使う場所や用法によって異なる意味をもつと言うことです。
そして当然のことながら「みる」という行為の前後には必ず心の動きがあるものです。
最近興味のあるウィゴツキーの言葉を借りれば「自覚性」と「随意性」という、意識して読み取り、自由に組み合わせていく力によって科学的思考を構成していくことも、ここにつながるのかな、と思いながら拝聴していました。
今回は2枚の写真を元に、工芸品の対話による鑑賞を進めました。
当然のことながら、本物を目にしたときの存在感と感動は何にも勝るのでしょうが、ときどきそれを言い訳に鑑賞をしない人を見かけるのは非常に残念です。
読み取るとか、読み解く、というのは普段からの態度に表れるものですから、思考を柔軟にしておくことはとても大切だと思います。本物だけにこだわる人は権威主義的なのかも知れませんね。
2枚の作品を見ていく中で、最後に齊藤先生が、2つのやり方の違いが分かりましたか?との問いかけがありました。
答える側に徹していたので、最初は・・・と答えに困ったのですが、参加者の皆さんの話を聞きながら思い出していると、なるほど違いがあったと思いだしてきました。
最初の作品は参加者6名の見方をそれぞれ答えてもらったのに対して、次の作品では齊藤先生も含めた見方や考え方知識などをかぶせていくやりかた等、という点でした。
・単に視覚的にとらえることにとどまる「みる」ではなく、想像や推察などを伴って作品を「みる」の行為をここでは鑑賞というとする。
・では、作品と向き合っているとき、鑑賞者には何が起こっているのか。
・好き、嫌い、気持ち悪い、心地よい、訳わかんない、どうでもよい・・・
・これらの気持ちがどこから来ているのかを自ら探るのが、対話型鑑賞。
上記の説明に続き、
(対話型鑑賞において)
作品選びの基本としてよくいわれていること
・まずは具象作品から
・複数の登場人物がいる(物語性を想像)
・物語を想定しやすい
を挙げつつ、そうでない工芸品による対話も十分に可能である点を、今回は示して頂きました。
参加者それぞれが感じたことはいろいろあったでしょうが、私が感じたことは、
「考え方を複数もっておくこと」の大切さでした。
たとえば、対話による鑑賞を行う際に「こうすれば上手くいく」「こうやるべきだ」と考えてしまえば、ナビゲーターなりファシリテーターの価値観の中で流れていきます。ところが、複数のやり方をもっていると、そのときの参加者の反応や対応を見て、柔軟に組み合わせを変えることが出来るという点です。
結局、だれのための鑑賞か、という点に戻るのです。
これは最近再び読み始めた(苦笑)、エフランドの「美術と知能と感性」(P73)に書かれていた「表現の形式が多いほど、彼らが知的世界を広げるための手立てが増える」という部分を思い出しました。この文章の文脈とは多少異なりますが、提供する側も受け取る側も、複数のチャンネルをもっておくことは、とても重要だと感じました。
後半は、薪ストーブの前でフリーディスカッション。
寒風吹きすさぶ外の景色を見ながらアイスクリームをほおばる、という薪ストーブならではの楽しみを味わって頂きつつ、それぞれが疑問に感じていることや、お互いの情報交換などを行いました。
今回お集まり頂いた参加者は、どなたも美術の持つ力を、それぞれの職場で試行錯誤しながら取り組んでおられる方でした。話が弾み、気がつけば6時。
帰りは齊藤先生のお気に入りとなった「骨付き鳥」を一鶴太田店に予約し、それをうけとって高松空港までお送りしました(笑)。
空港は運休の便が続いていたためにさすがに混雑した様子でしたが、無事東京にお帰りになった連絡があり、ほっとしました。
今回参加の講師の先生、そして参加者のみなさま、お忙しい中ではあったと思いますが、それぞれに何かしらのきっかけを得てお帰り頂けたと思っています。ありがとうございました。
そして、今回参加できなかった方も、次回はまなびあいにご参加頂き、それぞれの立場や職場でのお話が伺える輪が広がることを楽しみにしておりますので、ぜひご参加くださいますようお願いします。
次回勉強会は来年度。期日はまだ未定ですが、このブログを始め、公式HPやFB等で流しますのでよろしくお願いします。