事業概要

遊びは学び 〜生活と文化を緩やかにつなぐ〜

生活と文化は密接につながっています。人々の生活習慣が生み出すモノやコトから文化的な構造が生まれ,常に変化を伴いながら時代に合ったかたちが現れたり消えたりしています。

 当財団は美術教育のエッセンスを用いた企画活動や勉強会から始まり,美術展覧会への協力や若手作家の支援等も行ってきました。文化を楽しむ行為は知識や技術に秀でた人の特権ではなく,全ての人が心の豊かさを享受できる暮らしかたのひとつです。一時期は日々の生活で消費や効率を重視する風潮が後押しして,文化的価値が生活とは無縁の要素や蓄財の道具と考える風潮がありましたが,最近では昭和時代に見られた硬直的なヒエラルキーも和らぎ,立場や技能に関係なく自分たちのスタイルで文化的な要素を溶け込ませた暮らしかたを愉しむ人々も増えてきました。

 芸術鑑賞の際には多くの知識や技術があれば楽しみかたに幅が広がります。ですが,そもそも感じるとは人それぞれの想いですからその領域のスキル獲得が必須ではありません。幼い子どもでも自らの生活経験を活かして遊び感覚で自在に作品の中に入り込み,心豊かに感じ取るコトは充分に可能なのです。

 遊びは学び。これは全ての世代に共通する姿勢です。ここに「コト」の魅力や味わいの深遠さがあります。当財団では美術教育領域で培った知見を基に,ニーズへ寄り添いスキルにこだわらない事業を展開しております。また,インターネット関連の,スマートフォンやソーシャルネットワーキングサービスも生活に密着した文化の1領域であり,目に見えないモノやコトの集合体でもあります。その状況も踏まえて,当財団ではモノを枠組み(フレーム),コトを反応(リアクション)と定義します。

 このようなモノやコト,文化や生活を分けて考える必要がないとの意見も一部にはあります。しかしながら,一層の技術進歩と共に多様性や流動性や不確実性が増すと予想されるこれからの社会においては,大切にしたい暮らしかたをコトの視点から積極的につくり出し(セルフビルドし)つつ,社会全体がそれらの価値を共存させ得る「ゆるぎたるぎ」な様子が備わった文化の構築を必要としており,当財団ではその啓蒙に向けて人それぞれの感覚で暮らしの時間をデザインする「ことづくり生活」を提案します。

あなたらしさ・心地よさ 〜会員制での運営〜

事業のひとつに,財団が管理する施設を日常的に活用する「ゆかいスタイル」があります。運営はお互いが安心して活動・交流できるように会員制を採用し,コンセプトはさぬきの方言で「ゆるぎたるぎ」な暮らしかたとしています。ここでは一般的なご家庭や友人の集まりなどの,少人数での利用や普通乗用車一台でのご利用を基本としています。

 まずは本会運営の趣旨をご理解頂くところから始まります。

・生活スタイルを試行し志向する姿勢を愉しむ
・文化活動に積極的に参加して自己研鑽を図る
・余暇を楽しみ,明日への活力を手に入れる
・自然に親しみ,持続可能な暮らしを意識する
・家族や友人と過ごす時間を充実させる
・新たな文化を発信できる若い世代を育成する
・ゆるやかにつながり続ける仲間の輪を広げる

 設立以来,上記の趣旨を踏まえて効率や効果優先からは少し距離を置き,暮らしの自由研究と呼称した人それぞれのスタイルやペースで充実感を味わえる社会教育的・生涯学習的な活動を行っています。これが表題の,あなたらしさ・心地よさです。また,例えば手芸教室や料理教室などを数名で開催する場合,ご自分の興味や特技を活かして参加者と愉しむ工夫があれば公開イベントとしての実施を支援します。必要に応じてお手伝いしますので,あなたの良さや可能性を存分に発揮してください。

「あいだ」 〜決めつけない,可能性を残す〜

私たちはどのように暮らしても「世界」を消費します。素材のもつポテンシャルを最大限に引き出しても無駄を出しても,モノ消費でもコト消費であっても,おそらくは目指す方向が違うだけでどちらも間違いではありません。ところが比較によって価値の望ましさを問われると,人はどうしても基準値を定めて優劣で選択しがちです。

 些細な決断が迫られる場面は日常に数多くありますが,自分と異なる立場や可能性までを二項対立や同調圧力などでひとつの「ただしさ」にまとめる必要はありません。幾重にも連なり枝分かれしている「こと(様子)」を見つめ,人それぞれの内側から沸き上がるアイデアと主体的な行動力を活かしつつ共存・共立を目指した持続可能な生活・文化づくりとその振興が,多様な価値を認め合うこれからの社会に求められると考えております。その多様性(ダイバーシティ)や包括性(インクルーシブ)のある社会の醸成には,答えのない不確定な中から自分なりの価値観で分析・判断する哲学的な思考が必須です。これを簡便に行うためにへそ思考を考案しました。

 対立意見に対しては,自らの内と外にある価値を重ね合わせながらじっくり時間をかけて「あいだ」を探る姿勢が不可欠なのですが,何事も素早く白黒はっきりさせたい人から見れば判断を先延ばしにして時間を無駄にしていると捉えられがちです。それでも,他者の意図に振り回されたくない人や効率の追求や選択と集中の繰り返しなどでこころが疲弊している人にとっては,自分を見つめ直す時間やそれを実践する場が必要です。身近なところで優しい温かさに包み込まれる実感を得られ,趣味や立場や価値観などが異なってもゆるやかにつながり続けるコミュニティという,いかなる時にも持続可能性に展望をもてる社会システムも欠かせません。

 異質だという理由で排除せず,かといって全てを受け入れるわけでもなく,人それぞれの価値観や考え方を受け止め尊重しつつ,共立のための「あいだ」探しや日々の暮らしに手間をかけて丁寧に愉しむ実践のかたちを,日本で最も小さな香川県(讃岐)から「ゆるぎたるぎ」に発信し続ける所存です。どうぞよろしくお願いします。

(一財)さぬき生活文化振興財団
代表理事 多田俊二郎
設立:2011.6.8

支援を求めています

このふんわりとした曖昧さを取り入れる「ゆるぎたるぎ」な暮らしかたは,原理的に人それぞれのテーマや求めなどにじっくり向き合い,試行錯誤を慈しむ時間と場が必要です。この趣旨にご賛同くださる方の寄附行為を受け付けております。個人や法人・団体を問いません。事務局までご一報くださいませ。

 また,柔軟な発想を得る手法としての講演依頼もお受けします。二項対立を避けて三項的思考を推進することづくり生活やへそ思考,美術教育を専門職能教育に活かした企業や団体向けのセミナーも実施可能です。お気軽にお声かけください。