暮らしは「ふるまい」
ー ことづくりとは?
わたしたちの暮らしは,様々な事象であふれています。
事象とは,生命が生まれて大地に還るような壮大な世界観から,友人との些細な会話などの何気ない出来事まで含まれます。ものとことは,認識できる物質と事象を起こす関係性のどちらを見るかの違いで,一緒にすると物事と呼びます。
当財団は関係性に軸足を置き,単なる「ものづくり」に留まらない図工・美術教育に込められた発想・構想などの育成をベースにして,あらゆる活動の過程を肯定的で発展的に俯瞰する姿勢を重視しています。
※ーあらゆる「なにか(対象)」は,「なにか(理由)」があって「なにか(反応)」を起こす関係性(因果律や偶発性など)でつながっています。物理の世界では,あらゆる物質(モノ)の構造は素粒子の関係性でつくられるそうです。このような見えない事象を想像したり利用したりするのも,ことづくりのたのしみかたです。
ー 1点モノのことづくりとは?
これはあなたの想いを実現させた,オーダーメイドな思い出や経験などをつくるという意味です。
自らが計画案を練り,想いに合わせてシチュエーションや素材を用意し,より充実感のある経験をして欲しい願いをこの言葉に込めました。
その心得として,やってみる・失敗も愉しむ・心地よくの3つを挙げていますが,どれもが想いを発展させたり肯定させたりする時に必要な心構えです。
ー ことづくり理解の難しさ
なぜ「ことづくり」は「ものづくり」より難解なのでしょう?
それは,モノは全体を把握しやすく,コトは全体を把握しにくい傾向があるからです。
例えば【スマホ】(モノが主役)の場合,メーカーや機種が異なっても【長方形の薄い板状で,液晶画面がついた携帯通信端末】を想像します。お互いがこのイメージを共有(共通了解)できれば,少しぐらい曖昧でも気になりません。一方,【話した】(コトが主役)の場合は,どこで,だれとなど,動作の状況を伝え合います。
人が「なにか」を理解するにはまとまった視覚情報(イメージ)が必要らしいのですが,コトが主役の場合は詳細を確認する過程に時間がかかります。例えば太陽は見えますが,磁場や重力は見えないので作図の必要があるのと同じです。
また,「なにか」には状態の変化につながる因果関係などの理由も含みます。この「なにか」の射程は,およそ創造できる全ての名称をもつ対象に拡がっています。そこに「ことづくり」理解の難しさがあると考えています。
ー 本質を探求するため
あらゆる対象のあらゆる動きが「こと」です。
品詞で言うと,動詞や形容詞などですから,ビジネス的な体験やサービスという狭い領域に留まりません。そして「なにか」が動くにはその理由も不可欠です。また,理由がひとつとは限らず,複数が絡み合う場合もあります。
そこで私たちは「もの・こと」の本質に迫るため,ものは構造・ことは反応と定義しました。
そしてことづくりは「反応づくり」と同じ意味になりました。
ー 反応とは?
反応とは「なにか(※1構造をもつあらゆる対象)」のふるまいです。
そして「なにか(※2動詞や形容詞などで表現されるあらゆる事象)」が,あなたの経験となって想いを更に拡げます。「なにか(※1)」とは自然物や人工物のような存在や空間,概念に至るあらゆる対象です。そして私たちはあらゆる「なにか」を見て,感じて,考えます。
彩り鮮やかな野菜を見て,どんな料理をつくろうかとわくわくする。これも立派な「こと」ですし,アイデアを練る過程はことづくりです。
ひょっとすると,あらゆる知識や行動などにも共通構造があるのでは?
その発想から生まれた構造を「へそ思考」と名付けました。
ー 「みる」とは?
「みる」とは,対象の様子を確認する行為です。
例えば,物質が朽ちるにも必ず原因があります。このように,反応とは「なにか」に「なにか」が働きかけます。わたしたちは鉄が錆びた様子は瞬時に理解できても,錆びた理由はプロセスを想像するひと手間がかかります。
この理由を読み取るには,日頃意識しない時間や地場などの物理的要素や,因果関係の存在を見つめる試みが欠かせません。きっと友人や恋人の反応の理由の理解であれば,あなたは手間を惜しまないでしょう。
悩ましい事象が起きたとき,そこには必ず複数の要因があります。それを発見できると問題解決が近づきます。
これが「プロセスを把握して活用する」ことづくりの姿勢なのです。
ー ふるまいとは?
ふるまいとは,反応と同じく対象の動きかたです。
ひとつは「モノの動き」,もうひとつは「もてなし」です。「なにか(対象)」が「どうした(動作)」かを記述したり,対象(人など)が「誠意ある待遇」を示したりする行いです。心情の表現では,概念(例:人の好意が集まった)なども該当します。
ふるまいには二つの意味があるため,私たちは誤解を避けるために「反応」との表現を原則としています。
仮に「命の芽生え」と聞けば,みなさんは何を想像しますか?
複数の人に質問するとおそらく完全に一致する回答はなく,微妙に異なるでしょう。例えば花壇のチューリップは,あなたが意識していないところで水を吸い上げ,呼吸し,命の灯火を燃やし続けて,複数のふるまいを起こしています。
これが広大な「こと」の世界なのです。
ー こたえは常にあなたの中で
あなたが見つけるのを待っています
寄り添い,常に答えを相手に委ね,様子を見守る。
積極的利他性と呼よばれるこの姿勢は,わたしたちが来訪者の主観を大切する想いの現れです。
生きる力とはひとりひとりの内から沸き起こる活力で,他者の影響下に在る間はその能力が充分に発揮されません。きっかけは何であれ,あなたがあなたの中に在る答えに気づく。これが財団の基本理念に込めた「ことづくり」への願いです。
私たちは灯台のように,存在感はあれどさり気なくひっそりと,行き交う人たちの道しるべとして在り続けることを目指しています。
ー 詳しく知りたい方へ
へそ思考は,現象学(哲学)を参考にした独自の思考法です。詳細に興味がある方は,以下のリンクへお進みください。