「こと」の基本構造

事務局より

「ことづくりという哲学的対話」毎月第一日曜 13:30〜14:30
※ へそ思考セミナー・美術による専門職能研修等の依頼も受付中

「ことづくり生活」とは

日々の暮らしの中で人やモノ,考え方などを交流させる際に閃いた様々な思いつきを実際にやってみる生活の総称です。

本図はへそ思考で捉えた筆者の視点による構造であり,普遍的な「正解」を示していません。明日には変わっているかも。。人それぞれに当てはめてみて妥当性を図りつつ未来志向を図る姿勢とは言葉で言うほど簡単ではなく,「答えは必ず明らかに出来る」という前提に縛られた人にはなかなか理解できない部分ですが,ぜひみなさんもいろいろ考えてみてください。(本ページは製作途中です)
 

モノへの想い・コトへの想い

取捨選択よりも,選択肢をつくって維持する暮らしかた

選ぶとは,何かを排除したり切り捨てることで成り立ちます。モノは増えると置き場がなくなりますが,コトは物理的な場所が不要なのでどれだけあっても大丈夫です。思いつきやひらめきと同じく可能性はいくらでもこころの中に置いておけます。「ただしさ」に絶対はありませんから,いつでも選び直しができるように,今は大切に保留しておきましょう。問いの問題と同じように,モノは存在,コトは価値とシンプルに考えてみて,多様な価値のつくりかたや活かしかたを考えてみましょう。
 


プチ解説:「モノ・コト」の違い

簡潔に言うと
モノ:器全体の呼称
コト:器の出来事・解釈・論拠

一般的にモノは物品などでコトは出来事とされます。少し掘り下げて別の見方をすると,モノとは対象をひと括りにする「器:いれもの」に与える呼び名とも言えます。
宝石箱を例にしますと箱自体はモノですし,更に木材や塗料,蝶番などの構成部品やその素材というモノでかたちづくられます。そして,コトとはその器を構成する素材や部品などに分解したり,以前とは違う組みあわせかたや利用方法などを試行錯誤したりする状態をさします。
このように,コトとは思いつく限りの全てを網羅する特徴がありますので一言では語れないのです。(モノは絶対性をもつ対象なのですが,コトは相対性で示す対象ですから,文章内で用いられる「〜するコト」などでは文脈の読み解きが必要です)


モノとコトは人が世界を捉えるための大切な基本概念です。暮らしの中にあるほぼ全ての概念を理解するために,私たちは「こころ・出来事・仕組み」の3要素をバランス良く内包させて捉えていくとする考え方をここでは採ります。その3つが輻輳すると「空想・理念・機能」の要素が生まれます。これら6つを意識してさまざまな価値を分析すると,モノ・コトの根源的な本質を見つめやすくなるのです。こういった作業を分化して項目毎に実施するためには【へそ思考】がとても役に立ちます。これはコトの全体像を捉えるために欠かせない思考法なのです。
 


プチ解説:おまけ

例えば「イノベーション」とは変化を求める人が抱く概念(これ自体は「器」)です。変化を起こす必要がありますので,まずは如何にしてコト化を促進(曖昧化を拡張)するかという活動が重要になってきます。具体的には,現状において「〜は〜である」と型にはまったままの器をいったん粒状化したり構成し直したりする活動が要求されます。

そうして試行錯誤した対象に新たなモノ(器)を与えてあげるのですが,この段階ではある程度の使用方法も含めたモノ化(明確化)が重要です。この行為は「価値の錬金術」や「価値の相転移」との呼び方も可能です。このようにモノ・コトの特徴から見れば,イノベーションとは既存の価値を分解して再構成する力が求められるのだと説明できます。

つまり,イノベーションとは自覚的に多様さを拡張し続ける活動と,価値を見出した部分をひとつにまとめる活動との往還で見つけ出す新しい視点となります。一言で言えば不断の試行錯誤かも知れませんが,その用語自体が示す具体的な内容は多岐に渡りますので要点を区切って個別に説明する必要があるのです。
 

本解説:「モノ・コト」

「モノ・コト」の定義

モノ

絶対的な性質で明確さが要求され,独立した意味の塊が生じる

コト

相対的な性質で曖昧さが容認され,複数ある意味の連携が生じる

「モノ・コト」がもつ意味と具体例

モノ

◎世界を成立させる両輪のひとつ(基)
【仕組み:絶対】
 ・対象それ自体(包括的な呼称) ノード 名詞的
 ・存在 物質 粒子 超越 具体 などの樹形図構造
◎団塊化:動きや思索などがひとつにまとまる(静的な器(うつわ)化)
【機能:因果律】・予測可能性 ラプラスの悪魔 手段と目的の流れ
【理念 :画一】・単純明解 是か非かの問い 同意の要求 など
【出来事:固定】・実体的 集約(吸収や融合) 結実(ゴール) など
【空想 :独話】・質疑 モノローグ 排他性 など
【こころ:明確】・明白 明瞭 決定的(である) 受け入れ など

コト

◎世界を成立させる両輪のひとつ(節)
【仕組み:相対】
 ・対象の事態(具体的な様子) リンク 形容動詞的
 ・価値 精神 波動 内在 抽象 などのスケールフリー構造
◎連携化:動きや思索などが複数からみ合う(動的な霞(かすみ)化)
【機能:カオス】・予測不能性 バタフライ効果 偶然や失敗の連鎖
【理念:多様】・複雑難解 要か不要かの問い 合意の承認 など
【出来事:変動】・体験的 発散(放出や分離) 通過(プロセス) など
【空想 :対話】・応答 ダイアローグ 可能性 など
【こころ:曖昧】・手間 煩雑 保留的(もある) 受け止め など

へそ思考で解析した「モノ・コト」

モノの概念構造

コトの概念構造 

以下はいくつかの簡単な説明です

01 人はモノからコトを感じ取ります。お互いは常にセットで世界を構成する要素ですので,重要なのはどちらかという問いではなく,どちらに焦点化するかという姿勢を大切にしましょう。なお,感じ取れないモノは認識できていませんから非認知領域の存在です。また,ダークマター(暗黒物質と呼ばれる存在)のように他の要件から相対的に感じ取る方法を用いる存在もあると考えられます。これは実在のモノも同様で,何らかの対象と比較することでその存在を明らかにするという特徴もあります。
 


02 例えば「太陽の塔」という対象は他の名詞や形容詞などをどれだけ繋げても同様ですが,最も端的に言えば「岡本太郎による立体作品」という(明確さを要求した)ひとつの意味(文章)に集約されるモノですが,太陽の塔を見てどう感じるかやどのような価値を見出すかなどは人それぞれ(曖昧さの容認)であり,更に製作経緯や時代背景などの分別された事実(モノ化された対象)の付加も可能ですので,それが「太陽の塔」がもつ数多くのコトとなります。

 


03 モノがいくら集まってもコトにはなりません。例えば1年1組は学級という器(モノ)です。生徒も人間という生物(モノ)です。クラスメートも同質の人間が集まったモノの集合体です。男子も女子も学級担任も性質は異なりますが人間です。器を10個並べてもモノの集合体ですから,学級単位が増えたり学年が増えても同じです。でも,そこでモノ同士が動いたり出会ったりする生活(動的要因)が始まるとコトが起こります。

 


04 モノは一言で説明できますが,コトは一言で説明するのは難しいのです。例えば実際に蟻を見て,これは何ですか?とのモノの名を問う質問には「これはアリです」と器の名称を答えられますが,アリとは何ですか?というコトの質問には何をどのようにどこまで説明するか,が要求されます。説明が長いと嫌がられますし,短いと何のことやら判りませんので,「アリの何が知りたいですか」という質問で具体的にコトの領域を絞れば効率の良い説明が可能となります。

 


05 変化とは時系列で見ればAからBに変容したり移動したりする動きをします。氷というモノを放置しておくコト(時間をかける)により溶けるコト(融解)が起きます。だからといって変化を起こすための時間軸を含めるとコトになって瞬間を切り取るとモノになる訳ではなく,例えば「ボールが当たった」という瞬間を切り取ってその状態を説明すればそれはコトになります。これは言葉の示す対象が物質それ自体(ボール)か,その状態(ボールの挙動)かの違いがあるからです。

 


06 「そういうモノか」や「そういうコトか」という納得の表現につけるモノ・コトを例に挙げれば,何に納得したかという【示す対象】がモノ・コトの領域であり,なるほど!という納得の行為自体がモノ・コトのどちらかに分類されるわけではありません。同様に「体感するモノ」とか「体感するコト」なども「何を」「どんな状態を」体験するかという行為が示す対象がモノ・コトの領域です。それはへそ思考の3領域から分が可能です。

 


07 モノ・コトは「塊的結合・粉的分散」であり「器(うつわ)化・朧(おぼろ)化」を伴います。モノは実体的で判りやすいのですが,コトは体験的なのでその体験に込められる因数は進め方によっては複雑に入り組んで事前に読み切れません。またモノは整数,コトは乱数という単純な構造ではなく,仕組みで言えばモノは樹形図構造,コトはスケールフリー構造との表現が的確かと思われます。このあたりはもっと研究が必要な領域で,量子力学的な現象を参考にしながら進めてみたいと感じています。
 


08 モノ・コトのどちらが先かとか,どちらがより優位かなどの問いはあまり重要ではありません。もちろん問う姿勢はとても大切です。私たちが知る小さな世界ではモノが先にあって産まれ育ち,そして死んでいきます。理論物理学の世界ではモノは存在せず,出来事が膨大に生産される過程でモノが存在しているという説もあります。私たちは豊かな暮らしを送るための大切な両輪として,お互いを活かし合う考え方を大切にしたいと考えます。
 


09 価値づくりや地域づくりをことづくりと解釈する場面も多く見かけます。多様性などを活かす大切な取組なのですが,その内容が手段と目的によって明確な構造化がなされると,モノ化された状態へと移行します。明確かつ詳細なマニュアルはことづくりにおける活動には必要ないどころか,むしろ形骸化する恐れがありますので,多少太っ腹で同じ内容を違う視点で語ったり失敗したりするカオス状態を楽しむぐらいがちょうど良い場合があります。
 


10 これを言うと反感を買うことも多いのですが,多様性の本質は「みんな仲良くお手々つないで」ではありません。もれなく失敗や滅びもついてきます。好むと好まざるに関わらずことづくりにはその前提があるので,ことづくりと呼ばれる活動には企画した側が引いたレール以外にも想定していないような伏線が生まれる状況もいっぱい必要です。つまり人それぞれが選択肢を自由に作れる環境が大切なのです。
 


11 対象が何であれ「〜とは何か」と問えばモノ化しやすく,「〜とはどんな状態があるのか」と問えばコト化しやすくなります。ことづくりとは選択肢をつくりだす活動ですからモノ化させない前提で取り組む姿勢が必要です。これは意外と難しく,例えば「ことづくりとは何か」という問いはモノ化しやすい問いですから,「ことづくりとはどんな状態があるのか」という問いでコト化を促進させる必要があります。
 


12 どんな知識もモノです。使おうとして始めてコトが起きます。生まれたり滅したりする動きもコトです。人はコトのきっかけづくりはできますが,途中で起こる仕組み自体は厳密に言えば見つけて使うだけでつくりだしている訳でありません。そしてひとつの結果としての出来事を見たり聞いたりしてコトを感じとるのはあくまでも人です。ちなみに,問題を出して答え合わせをする活動はモノ化されたコトです。
 

より詳しい内容は以下のサイトへ

 【ことづくりの構造解析】→


ことづくりは「かたちのあらわれ」との対話から

概念世界のモノとコト

モノだから「○○」コトだから「○○」と簡便な対峙では説明できません。概念の世界では両方とも私たちが暮らす世界をかたちづくる大切な要素であり,世界の調和は二項対立よりも三項関係から生まれると考えられるからです。

※ 本説明では以下の用語をこのように解釈しています。

意味 … 対象の成り立ち
価値 … 対象のものさし
存在 … 対象の見えかた
認識 … 対象の捉えかた

「かたち」の3領域
・法則的なかたち:論理的に解明されている自然律のかたち
・物質的なかたち:目や耳など感覚器を通して伝わるかたち
・心情的なかたち:心で感じ取る情動的で同時多発的なかたち

「あらわれ」の3領域
・現れ:変化の本質に人が関与できない深層的法則性のあらわれ
・表れ:変化の大部分に人が関与できる表層的物質性のあらわれ
・顕れ:対象の覆いを取り外し受け取る主観的情動性のあらわれ
 


※ 本サイトの記載内容について:
「ことづくり生活」「へそ思考」,モノやコトの分析などは,ことづくり生活研究会主宰者 多田の独自研究であり,内容の一部を公式ブログや学会研究発表等で公開しておりますが,書籍等を発行するには至っておりません。より良い暮らしのかたちを志向するひとつの思考法として,主に心理学や教育学,哲学などを参考にしながら,日々実践と研鑽に取り組んでおります。お問い合わせ,ご意見,ご助言等は事務局までお寄せ頂ければ幸いです。